9.「自分の仕事」を見つける
西村:大学で学生たちに、みんなにデザイナーになってほしいってあんまり思ってなくて、「自分の仕事」をしてほしいなっていう願いがすごくあるんだって話すんです。じゃあ、「自分の仕事」ってのは何なのかなって考えると、思わず悔しくなってしまったり、それは自分がっていう感情がプクッて湧いてくるようなこと。ただのお客さんではいられないことが、その人の仕事なんだと思うんですよね。そういうものを見つけたら、その時に力が足りなかったとしても、追っかけて行くといいと思うんですよ。何でかっていうと、そういうことが一番力を出し続けられるからです。やり続けられることをやるのが一番良くて、そのポイントは力が出ちゃうことをやることだと思うんですよね。良さそうなことをやるんじゃなくて。自分の頭で考えたことってのは、そんなに信じなくても良くて、それよりは自分が思わずざわってくるとか、どきどきするとか、そういうことを確かめてゆくといいんじゃないかなって思う。そして、そうしたことを見つけるためには、自分の感じてることを感じるっていう目線とか、自分付き合いっていう感覚があるかどうかが肝要になってくる。
今日の話に結びつけていくと、子ども時代に自分と過ごした時間が何らかの足がかりになるはずだし、大人が何かをつくり得るとしたら、その子がその子自身とつきあう時間をどうやってつくるかっていうことかな。その時に、親がどんなふうに一緒にいられるかとか、あるいはどれぐらい一緒にいないかとか、そういうところが肝要なんじゃないかなと思ってます。
遠藤:子どもにかかわる人たちに必要な資質というか、姿勢みたいなものを、このインタビューを通じて、いろんな方に質問してるんですが、今日お話をうかがって、自分の声をちゃんと聞いてるかどうかっていうことが、どうもポイントのような気がしています。
西村:そう思いますね。どんなことが対象でもそんなに変わらないんじゃないかな。
遠藤:今日は本当にありがとうございました。