西村佳哲さんインタビュー

#001 西村 佳哲さん

9.「自分の仕事」を見つける

西村:大学で学生たちに、みんなにデザイナーになってほしいってあんまり思ってなくて、「自分の仕事」をしてほしいなっていう願いがすごくあるんだって話すんです。じゃあ、「自分の仕事」ってのは何なのかなって考えると、思わず悔しくなってしまったり、それは自分がっていう感情がプクッて湧いてくるようなこと。ただのお客さんではいられないことが、その人の仕事なんだと思うんですよね。そういうものを見つけたら、その時に力が足りなかったとしても、追っかけて行くといいと思うんですよ。何でかっていうと、そういうことが一番力を出し続けられるからです。やり続けられることをやるのが一番良くて、そのポイントは力が出ちゃうことをやることだと思うんですよね。良さそうなことをやるんじゃなくて。自分の頭で考えたことってのは、そんなに信じなくても良くて、それよりは自分が思わずざわってくるとか、どきどきするとか、そういうことを確かめてゆくといいんじゃないかなって思う。そして、そうしたことを見つけるためには、自分の感じてることを感じるっていう目線とか、自分付き合いっていう感覚があるかどうかが肝要になってくる。

今日の話に結びつけていくと、子ども時代に自分と過ごした時間が何らかの足がかりになるはずだし、大人が何かをつくり得るとしたら、その子がその子自身とつきあう時間をどうやってつくるかっていうことかな。その時に、親がどんなふうに一緒にいられるかとか、あるいはどれぐらい一緒にいないかとか、そういうところが肝要なんじゃないかなと思ってます。

遠藤:子どもにかかわる人たちに必要な資質というか、姿勢みたいなものを、このインタビューを通じて、いろんな方に質問してるんですが、今日お話をうかがって、自分の声をちゃんと聞いてるかどうかっていうことが、どうもポイントのような気がしています。

西村:そう思いますね。どんなことが対象でもそんなに変わらないんじゃないかな。

遠藤:今日は本当にありがとうございました。

Profile

西村 佳哲(にしむら よしあき) プランニング・ディレクター 1964年東京生まれ。武蔵野美術大学卒。 つくる・書く・教える、三種類の仕事。建築分野を経て、ウェブサイトやミュージアム展示物、公共空間のメディアづくりなど、各種デザインプロジェクトの企画・制作ディレクションを重ねる。 多摩美術大学をはじめいくつかの教育機関で、デザイン・プランニングの講義やワークショップを担当。リビングワールド代表(取締役)。全国教育系ワークショップフォーラム実行委員長(2002〜04)。働き方研究家としての著書に『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)、近著に「自分をいかして生きる」(バジリコ出版)がある。 リビングワールド以前の仕事「センソリウム」(1996〜98)は、オーストリア・Ars Erectronica CenterのPRIX ’97|.net部門で金賞を受賞。(プロジェクト・チームでの受賞。全体のマネージメントと企画・制作のディレクションを担当。 http://livingworld.net