西村佳哲さんインタビュー

#001 西村 佳哲さん

4. 自分の自動性

遠藤:わたしの場合、何かを考えるときに、子ども時代の遊びがほぼ全部というか、そこにしか戻れないっていうところがあるんですが、西村さんの場合、何か考えるときに立ち戻る記憶ってありますか?

西村:それでいうと、自分の取り柄というか、ほっておいても作動しちゃう自分の自動性みたいなものは何かなって考えると、「思いついて、声をかけて、形にする。」っていうことをやってると思うんです。これは僕の自動性で、頼まれたことがきっかけで、それが作動することもあるけど、仕事の依頼が来なかったとしても、やっぱりそういうことを考えるんだよね。『自分の仕事をつくる3日間』 1をやったり、リビングワールドのプロダクト 2をつくったりするわけです。それは、本当に生涯やってることだなと思ってて、小さい頃はそれを何でやってるかっていうと、ごっこ遊びです。「今日は何とかごっこをしよう」みたいな感じで一緒に過ごして、夕方になったら「今日は楽しかったね」といってさよならする。それを延々やってる感じがしますね。だから、今の遠藤さんの話には、100%同意ですね。

1分や3分といった単位時間ではなく、別の種類の時間を示す砂時計「In this time」。「100人の子どもが生まれる時間」「100個の星が宇宙から消え去る時間」「1つの生物種が地上から姿を消す時間」など
1分や3分といった単位時間ではなく、別の種類の時間を示す砂時計「In this time」。「100人の子どもが生まれる時間」「100個の星が宇宙から消え去る時間」「1つの生物種が地上から姿を消す時間」など

会社に入って仕事をしてるときにも、そうだなと思ってた。というのは、会社にいると、部長がいたり、あるいは部下がいたりするわけだけども、その人たちを、例えば、高校のクラスにぎゅっと落としてみるとか、あるいは小学校のクラスにぐっと落としてみると、あの部長はクラスのあいつだとか思うわけですよね。まずそのクラスの中でのポジションみたいなものを大人になっても演じてるような感じがあるし、さらにいえば小さい頃に好きだった遊びと大人になってから使ってる感覚は変わらないと思うんですよね。自分が知ってる面白さみたいなものがなかったら、ロジックが優れてるとか、論理的に正しいだとか、そういうところでしか仕事ができなくなってしまうので、遊びの中で育んだ、ある感じだとか、魅力だとか、あの何とも言えない面白さだとか、そういったものの味わいが大人になってからも、それぞれを支えてる気はします。

  1. 「自分の仕事」を考える3日間 「仕事」や「働き方」をテーマにしたフォーラム形式のトークセッション。奈良県立図書館で2009年1月に第1回が開催され、第2回は2010年の1月9日〜11日に開催される
  2. リビングワールドのプロダクト 1分や3分といった単位時間ではなく、別の種類の時間を示す砂時計『砂時計・In this time』や、透明なガラスキューブの中に、8万点の恒星データで描いた銀河系が浮かぶ「太陽系のそと」など

Profile

西村 佳哲(にしむら よしあき) プランニング・ディレクター 1964年東京生まれ。武蔵野美術大学卒。 つくる・書く・教える、三種類の仕事。建築分野を経て、ウェブサイトやミュージアム展示物、公共空間のメディアづくりなど、各種デザインプロジェクトの企画・制作ディレクションを重ねる。 多摩美術大学をはじめいくつかの教育機関で、デザイン・プランニングの講義やワークショップを担当。リビングワールド代表(取締役)。全国教育系ワークショップフォーラム実行委員長(2002〜04)。働き方研究家としての著書に『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)、近著に「自分をいかして生きる」(バジリコ出版)がある。 リビングワールド以前の仕事「センソリウム」(1996〜98)は、オーストリア・Ars Erectronica CenterのPRIX ’97|.net部門で金賞を受賞。(プロジェクト・チームでの受賞。全体のマネージメントと企画・制作のディレクションを担当。 http://livingworld.net