#006 松本理寿輝さん インタビュー
子どもがひらくまち
子どもが生まれてはじめて、自分たちが住まう町での人と人のつながりの大切さを差し迫ったものとして感じました。隣近所のつながりが途絶えてしまった都会での子育てに孤独を感じる一方で、子どもがいるからこそ見えてくるつながり、町の風景があることも感じました。
どのような場があったら子どもにも親にも、地域にとっても幸せなのだろう?そんなことを考えていた矢先「まちの保育園」の存在を知り、代表の松本理寿輝さんにインタビューさせていただきました。何度も通う中で印象的だったのは、場がまるで生き物のように有機的に変化していたということでした。子どもたちと呼応するように成長し続けるというあり方そのものが全てを物語っているような気がしました。
1. まちにひらく
—「まちの保育園」という名前は、保育園が目指すあり方を示すとてもいい名前だなと思うんですけど、どんな想いをこめているのか教えてください。
松本:子どもにとって0歳〜6歳までは人格形成期と言われていて、その時期にどんな人に出会うか、人の多様性や様々な関わり方を体験することがとても大切だと思うんです。子どもたちの現状を見てみると、家ではお母さん、保育園では保育士と若い女性と過ごす時間が圧倒的に長い。でも、もっといろんな人がいるし、いろんな考え方、生き方があることを子どもたちに知ってほしい。日常的にいろんな人と関わる機会をどうやったらつくれるかなと考えると、まちにはいろんな人がいるし、まちに対して保育園をひらいていくといいんじゃないかと思ったんです。 社会的な視点で考えても、子どもがまちに与える影響ってとても大きいと思うんですね。子どもがいるだけで、その場がほころんだり、明るくなったりする。子どもには、そういう役割があるんじゃないかと思う。でも、今は安全安心を考えすぎるあまり、子どもの親や教師でなければ子どもに接する機会が極めて少ない。それは、社会的にもったいないことだと思うんです。だから、まちの中で子どもに接する機会がたくさんある状況、環境をつくりたい。 家庭の状況を見てみても、保育園と家庭、職場の往復になっていて、子育ては孤独なものになっていると思うんです。保育園が、自信を持った子育てができるように、ある種の家庭の教育もしていけるんではないか。子どもにとっていい環境を考えていくと、それは社会にとってもいい環境だし、家庭にとってもいい環境なんですよね。そんなことを考えて、昔ながらの地域ぐるみの教育、保育を具体的に推進していく、まちにひらかれた保育園というコンセプトになったんです。
―保護者が関わりを持てる保育園は意外に少ないと感じているのですが、まちの保育園ではどんなふうに保護者との接点をつくられていますか。
松本:保護者の方に子どもたちがどう過ごしているかを知っていただくためにも、家庭での過ごし方を共有するためにも、希望があれば一日保育室に入っていただくこともあります。カフェやギャラリー、園庭で過ごしてもらったりと保護者との対話の時間は積極的に増やしていきたいと考えています。
―まちの人たちを具体的にはどんなふうに巻き込んでいこうと考えられてますか。
松本:併設されたカフェに日常的にまちの人たちが集まるので、そこで地域との接点をまずはつくっていこうと考えています。その上で、ギャラリースペースを地域の人たちに解放したり、保育園にコミットしてもらえる余地をつくりたいと思っています。現時点でボランティアとして40名程登録されているんですが、ほんとにいろんな人が関わっているんですね。一回限りの訪問だと子どもたちとの関係が築きにくいので、月に二回くらいは訪問できること、朝と夜二回はスタッフとお互いの考え方共有することをお願いしています。