5.境界線を超えた表現
—愛知県児童総合センターでのワークショップは、いつも楽しみにされているようですが、どんなところが場としておもしろいところなんでしょうか?
荒井:田島さんっていう、ブルーノ・ムナーリを大好きな人がいてね。だから興味があるというか、おもしろいなって思ってる。それがスタッフにも徹底されているんだけど、すごくのびのびしてるしね。こうもやれる、これもできるっていうアイデアを随所に感じられるんだ。今年の1月にもお父さんと子どもでワークショップをやってほしいって言われて。最初やだなぁって思ったんだけどね。結果的に、すごくおもしろかった。
—ミラノでムナーリのお墓参りまでされたそうですが(笑)、ブルーノ・ムナーリのどんなところに魅力を感じていますか?
荒井:ムナーリに詳しい訳じゃないけど、どう考えたって、おもしろいよね。ムナーリのことを知っていくと、この人が何者かなんて気にならなくなる。あるところではデザイナー、あるところではアーティスト。そういうふうに生きてきた人なんだと思うんだけど。ムナーリのデザインは「人間」のことを考えているんだよね。そうすると、そこには当然「子ども」も含まれているから、「子ども」のことをやるのも自然のことだったんじゃないかと思う。そういうことを、無理なく考えられた人なんじゃないのかなぁ。
でも、実際のところはみんな、そういうふうに生きてるんじゃないかと思うんだけど、大学なんかに行くと、ジャンルが細かく分かれているじゃない。そういう仕切りがあるから学問なのかもしれないけど、それを超えたところで表現することは、当たり前のことなんじゃないかな。
デザイナーで、「子どものことを(仕事として)するのが苦手だ」っていう人いるけど、そういう人ってダメだと思う。そんなこと、口が裂けても言っちゃいけないと思うんだよね。「子ども」のことを考えたり、つくったりする仕事が、あるクオリティーとして低いものだと見てると思うんだ。日本では、そう思ってる人が多いよね。それが悔しいし、なんとかそういう意識を、少しでもはっとさせたいって思うから、絵本でやろうとしていることがあると思うんだ。「絵本」と「アート」を分けて考えるんじゃなくてね。だって、既に「アート」の中に「絵本」は含まれているはずだから。