#018 全田和也さん

3.調和しながら生きている

― 私も参加させていただいた「パーマカルチャーと子どもの未来研究室」は、保育園で開催されているにも関わらず「子ども向け」「親子向け」という縛りがなかったですね。すごく自然な形で、子ども“も”いる、という感じがしました。何か意図があったのですか?

確信犯的に意図したわけではないけれど、僕にとって「多様性」というのはものすごく重要なキーワードなんです。パーマカルチャーの10の原則にもありますよね。

パーマカルチャーの10の原則
① 相互作用、関連性のある配置
② 多機能性
③ 複数のバックアップシステム
④ 効率的なエネルギー計画
⑤ 生物資源を使う
⑥ エネルギーを循環させる
⑦ 小規模集約システム
⑧ 遷移と進化を早める手助けをする
⑨ 多様性を活かす、大事にする
⑩ 接縁効果を最大限利用する

多様性のあるものが、それぞれの個性を活かした相互関係を持つことで、生態系の強度があがる。つまり、多様なもののつながりがサスティナブルな世界を作っている。

―ワークやりましたね!様々な植物、太陽、雨水、人、池、色々な要素がどのような相互関係にあるかを、その要素になりきって、カラフルな毛糸でつながるワーク。毛糸のどこかが切れても、複雑に相互関係ができていれば、システムは崩れない。でも相互関係が弱ければ、どこかで不具合が起こると簡単に壊れてしまう。

場を構成する要素のつながりを可視化するワーク。例えば、「雨水を浴びて植物が育つ」という関係は、雨水のプレートと植物のプレートを毛糸でつなぐことで表現する。写真では、子どもたちがはさみで毛糸を切っている。
場を構成する要素のつながりを可視化するワーク。例えば、「雨水を浴びて植物が育つ」という関係は、雨水のプレートと植物のプレートを毛糸でつなぐことで表現する。写真では、子どもたちがはさみで毛糸を切っている。

これって人間関係でも同じだと思うんです。それぞれの個性が相互に影響しあうことで、豊かな場が作られていく。多様性のない閉鎖的な関係性であれば、ちょっとしたことで煮詰まってしまう。だからプログラムを同じようなバックグラウンドのメンバーでやるイメージはなかったですね。

―運営の姿勢もパーマカルチャー的ですね。

まあシンプルに、僕自身がいろんな人と出会って「こんな考え方もあるんだ!」「こんな生き方が成立するのか!」という感動を味わいたかったから、というのもあります。
僕がパーマカルチャーでいいなと思うのは、どれも否定せず一旦すべてを受け入れるところです。誰かにとっては「こいつ苦手だな」って存在でも、視点を変えれば「いや、こいつイイ奴だよ」となる。それぞれの違いを尊重して、全体としては調和して共存しているのが自然だと思うんです。例えば、シイタケとキウイが…

―シイタケとキウイ?(笑)

「え?お前こんなジメジメしたところに住んでんの?」「いや、俺はここがいいの。あんまり日に当たると蒸発してカサカサになっちゃう」「じゃあ、俺が日陰作ろうか?」みたいな(笑)。普通に考えたらシイタケとキウイがつながるって思わないじゃない?だけど実はお互いの特性がちゃんとかみ合っている。
人間も一人一人、どんな性質をしていてもいい。良い悪いと点数で測れるものじゃなく、いろんな人がありのままの自分でいながら、相互に影響しあって生きていく方が絶対面白いと思うんです。
僕は子どもたちが思い思いに育つことができる場を作っているけれど、究極的な目的はすごくシンプルで、いろんな面白い人がいる感動にあふれた世界にしたい。ただそれだけです。

2016年のワークショップの様子
2016年のワークショップの様子

Profile

全田 和也 (まったかずや)

全田 和也さん

NPO法人ごかんたいそう代表理事

神奈川県逗子市で保育園「ごかんのいえ」「ごかんのもり」を運営。アートや野外遊びを積極的に取り入れた保育を行っている。保育園「ごかんのもり」ではパーマカルチャーのワークショップを実施。2016年4月には、逗子駅近くのテナントを拠点に、地域の方の学びと交流の場「ごかんのえき」をスタート。

ごかんたいそう|保育とパーマカルチャーとアート