#007 藤田ゆみさん

5. 与えるよりも守ること

— いまのお仕事とケアワーカーのお仕事は、深いところでつながっている感じがして、とても興味深いです。

藤田:とにかく、みんなが自分らしく毎日楽しく笑って暮らして欲しい。人との関わりの中でしか人って生きられないって思うから、人が集まる場所があって、その中でそれぞれが家族のかたち、子育てのかたち、その人らしい人生をおくるためのきっかけをつくれたらいいなと思う。結局、気付くことは自分でしかできないから、私には何もできないんだけど、でも何かしたい、関わりたいっていう気持ちなんですね。特に社会で弱い立場に追いやられている人たちに添いたいという気持ちはあって、自分自身の経験からいうと、人の繋がりの希薄な都会で子育てするお母さんもそうだと思うんです。根本は、そういう人達に対して何かしたい、関わりたいっていう気持ちだけなんです。今後、もっと直接的な関わりができたらいいなと思っていますし、よくよく考えてみると、やってることは子どもの時のままですね。

写真:藤田二朗

— 子どもが子どもらしくあることが難しい社会になってきているように思うんですが、藤田さんはどんなふうに感じられていますか。

藤田:子どもがどういうところでのびのび自分らしくできるか、というとなんにもいらないんですよね。木だったり、どんぐりだったり、ただ芝生の上でごろごろしてたり。子どもにとっては、そういうことが楽しい。外から過剰に働きかけることって、小さければ小さいほどいらないと思うんです。

でも、いまの社会を見てみるとテレビだったり、CMだったり、子どもへの外からの働きかけが多すぎる。だからこそ、与えるよりも守ることの方が大事なんじゃないかと思っているんです。どういう環境が子どもにとっていいのかと考えると、ひとりひとり全く違って、それぞれがどんな種を持っていて、それがいつどんなふうに開花するかわからない。その子のペースで一番いい時に芽が出るように、いかに見守ってあげられるかが大切だと思います。

— 最後に、子どもに関わる人たちに必要な姿勢について教えてください。

藤田:邪魔しないこと。その子が持って生まれたものをそのまま、自分のタイミングでのばしていくのを、邪魔せず見守れるか。見守るって、とても難しいと思うんですよね。ついつい手を出してしまう。でも、それをいかに手を出さないかが肝要だと思います。

— 今日はありがとうございました。

 

Profile

藤田 ゆみ(ふじた ゆみ)
くらすこと 主宰。ケアワーカーとして特別養護老人ホームにて寮母職に従事し、その後、社会の福祉に関わることは、どのような形でも一生自分の核になるものであるという思いがあったため、もう一つの夢であった出版の仕事をしたいと思い、編集プロダクションに転職。その後、ライフスタイル系カルチャー誌の編集部をいくつか経て出産と子育てのため一時仕事を離れるが、自らの子育ての日々を通し、 2005 年、オーガニックな暮らしやスローな子育てをテーマとした“くらすこと”の活動をはじめる。 子どもは8歳の長男と4歳の長女、2歳の次男の三人。

くらすこと
http://www.kurasukoto.com/