2. みんなが育つ場所
— くらすことをはじめられたきっかけを教えてください。
藤田:子どもを産んでみて、子育てってすごく大変で、ひとりでできるものじゃないんだと気付いて、そういう自分の経験から、お母さん同士で仲良くなったり、ちょっとしたことでも話せて、楽になってもらえる、そういう場所をつくれたらいいなと思って、はじめました。
雑誌で連載させてもらったり、食のワークショップをしたのが活動のはじまりなのですが、自分たちのお店を持つことになったきっかけは、陶芸家のイイホシユミコさんと子どもの器をつくろうという話から、製作は福祉施設にお願いするのはどうかという話になって、その器と自分たちが使ってよかったものを一緒にお店に置いてみるのはどうだろうということになったんです。雑貨が好きというのでは全然なかったんですけど、いまではいろんな人に支持してもらえるようになりました。
— 私はいままさにはじめての子育て中ですが、藤田さんにとって最初の子育てはどんな体験でしたか。
藤田:子どもが産まれる前は子どもに興味なくって、突然妊娠して、子育てってどんなものかなんてなんにも考えずに、実家で出産して東京に帰ってきました。いままで仕事しかしてなかったのに、夫は毎日終電帰りで、子どもとふたりっきり。今までは、どんな仕事も自分ががんばったら乗り越えられるものだという思いがあったので、子育てもてっきりそうだと思っていたんです。でも、どんなにがんばっても泣きやまない。ちょっと見てくれる人もいない。産後三ヶ月を過ぎたあたりで、もうどうしようもない気持ちになっていました。
児童館に行っても仲間に入れないし、子育てサークルの集まりにも行ったけど、常連さんばっかりで全く輪に入れない。電車に乗って遠いところまでやっとの思いで行ったのにと思ったら、余計に情けなくてみじめで、泣きながら帰ったこともありました。ひとりぼっちで子どもを育てるなんて、どうしたらいいのかわからなくて、本当にしんどかった。そんなの育てられるわけないって、今ならわかりますよ。
そんな風にお母さん仲間もなかなか見つけられなかったですし、どちらかというと得意じゃない。だからこそ、そんな風に困っているお母さんの気持ちもわかる。だから、私みたいなタイプの人でも、すんなりあたたかく迎えてくれる場所があったら、私自身、もう少し楽に子育てのスタートをきることができたんではないかなと思いがあって、いろいろなことをやっています。
藤田:その後、子どもが保育園に入ってからは、先生が子どもの成長を一緒に喜んでくれて、お母さん達とも仲良くなって、そうなってはじめて子どもと向き合えたんです。余裕がないとだめなんですよね。だから、子育てもどんどん開いて、みんなに育ててもらったらいいと思うんです。子どもと一緒に自分たちも育ちながら、みんなにとっていい環境をつくれたらいいなと思っています。