2. 本の息づかいを感じる場所
遠藤:すごいなぁ。文庫本とか詩集とか、写真集も充実していますが、このあたりもその期間で決めたんですか?
鈴木:そうですね。選書はほとんど悩みませんでした。店に並べたいかどうかは自分でわかっていたので。オープン時からほぼ変わってないと思う。もちろん、流動的だし、当時入れてても、今は入れてないとかはあるけど、そんなに方向性は変わってないかな。ただ、最初は、本を出版社別に並べてたんです。
搬入日には四日市からスタッフが来て、手伝ってくれました。来た本を一冊ずつチェックして伝票と突合せして。その作業だけはみんながやってくれたのだけど、棚に詰めていくのは、大体わたしがひとりでやりました。この本をここに置いたら、これを隣にとか、考える余裕はなくって、とにかく詰めなくてはという感じだったから、出版社という括りで入れるのが楽だったんですね。でも、棚に本がおさまってからは、この作家の横に、これを置いてとか考えるようになって。自分がお客さんだったら作家も、年代も、まざっていたほうが面白いだろうなと考えていました。
この規模であればどこに何があるかは把握するべきだし、並べ替えもできるって思いながらも、二週間ぐらいそのままにしててね。大体のお客さんは雰囲気をみて「いいお店になったね」と褒めてくれたんだけど、フリーの編集者の松田素子さんは一言も何も言わなかったんです。良いとも悪いとも言わない。がまんできなくなって「どうですか」って聞いたら、「これが本当にやりたいことなの?そうじゃないでしょ」って言われたんです。ドキッとしましたね。見抜かれたと思った。でも、その時点で何を言っても言い訳にしか聞こえないし、かっこわるいと思ったから「次来た時に、もう一度見てください」って言って、次の日に早速並べ替えたの。そんなふうにして棚ができていったのね。落ち着くまで、オープンして三ヶ月ぐらいかかったかな。本を全部棚から出して入れなおしたから、大変だったはずなのに、その時の記憶がほとんどないのが不思議。多分、すごく楽しかったから記憶がないんだと思う。ずっと居心地悪かったから。
遠藤:個人的には、『おちゃのじかんにきたトラ』と『こねこのチョコレート』、この二冊が並んでいることが、ものすごくうれしくって。この絵本の良さを分かってくれてるなぁというのが伝わってきます。なんていうか、いい本屋さんの本って、モノを超えて息づかいを感じると思うんですけど、最初にお店に来た時に、潤さんの選んだ本たちの息づかいを感じられて、うれしくなったのを覚えています。本が正しく息をしていられる場所というか。
鈴木:よかったあ。
ジュディス カー¥ 1,321
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B.K. ウィルソン¥ 1,155
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