移動の疲れや興奮も少し解けた2日目の朝、大人プログラムは始まりました。自己紹介や今の気持ちのシェアリング、お互いの名前を覚えるアクティビティをして、一息ついてから、一番最初に行ったのは、次のようなワークです。
1.日々の子育てにおける困りごとは何ですか?
2.それがどんな状態になれば解決したと思えますか?
3.このキャンプが終わった時、どんな状態でありたいですか?
3つの問いを書いた紙に、それぞれ、参加者の皆さんの今の考えを書いていただき、再び紙を回収し、講座に入っていきました。
2日目の題材は、コモンセンスペアレンティング(CSP)。
CSPは、怒鳴ったり脅したりすることなく、子どもに何かを伝えるための“手法”のことです。
まず皆で、子どもに伝わりやすい言葉の選び方や態度、環境づくりについて確認し、その後で日々の困りごとやそれに対する声掛けについて語り合いました。
「一度見始めるとテレビやスマホがやめられなくて…」
「下の子が寝ているときに上の子が騒ぐことがあって…」
「食事を食べる時にクチャクチャ音がするのがなかなか治らなくて…」
様々な悩みについてグループで、時に全員で語り合いながら、少しずつ困りごとを紐解いていきます。
“どう子どもに伝えたらいいのか”から始まり、そもそもの“困りごとが起こらないための工夫”(例えば、一日の流れのタイムテーブルの組み方、子どもの視点を変える仕掛け)に話は広がり、「それって本当に問題行動なのかな?」という根本的な問いが出ることも…。
皆の経験や知恵が重なり合い、話がどんどん深まっていきました。
3日目の題材は、アンガーマネジメントとCAP(子どもの人権の尊重)。
アンガーマネジメントでは、そもそもの怒りの根っこにある期待や要求を確認し、怒りの手前にある感情について皆で考えました。(アンガーマネジメントでは、怒りは二次感情であり、その根本となる別の感情があると考えます)
アンガーマネジメントの学びを通じて、「子どもの問題行動だと思っていたけれど、私(親)の問題かもしれない」という声も聞こえてきたり、少しずつ視線の先が「子ども」から「親(自分)」へと移っていきました。
CAPでは、子どもが見ている視界を体感できる“チャイルドビジョン”と、子どもの手の感覚を再現するための軍手を使い、ワークを行いました。
「コップに水を注ぐのがすごく難しい!しかも失敗したら「またこぼしたの!」って怒られてしまうなんて…」
「周りが全然見えない!だから、あの子、交差点で頭を振って周りを確認していたのね」
子どもの未発達な身体を実際に体感することで、たくさんの発見がありました
このワークの後のダイアログでは、これまで親の視点で見ていた問題を、子どもの視点から捉え直すような発言がいくつか出てきました。
そして最後のワーク。
1.日々の子育てにおける困りごとは何ですか?
2.それがどんな状態になれば解決したと思えますか?
3.解決に向けてどんなことができそうですか?
3つの問いを書いた紙に、それぞれ、参加者の皆さんの考えを書いていただきました。
実は、この問いは、大人プログラムの一番最初のワークと同じ質問です。
改めて、一番最初に書いた内容と見比べてみました。
「子どものこういう振る舞いに困っている」
「子どもにこう変わってほしい」
そのために「〇〇を学びたい、身につけたい」
最初のワークでは、子どもに変化を求め、そのために何か特別なスキルを身につけたいと願う記述が多くありました。
一方、最後のワークでは、多くの方が、子どもとのよりよい関係のために“自分がどうありたいか”を書いていました。
中でも「解決に向けてどんなことができそうですか?」への答えは印象的でした。
「子どものことをよく見る」
「子どもの話をよく聞く」
「感情的になったら子どもを抱きしめる」
皆で色々なことを学び、さんざん考え、語り尽くした結果、最後にたどり着いた答えは
― 見る、聞く、触る(抱きしめる)。
最後は、こんなにもシンプルなことに集約されていきました。
よりよい親子関係のための要は、見る、聞く、触る、ということだろうか。
そうだとしたら、子育てってなんてシンプルで、難しくて、素敵なことだろう!
分かったような、分からないような…
参加者の皆様から、またひとつ面白い宿題をいただいたような気がします。
筋書きがあったようでなかった、大人プログラム。誰一人欠けても、同じ学びにはなりませんでした。参加者の皆さま、ありがとうございました!
子どもプログラムに携わっていただいた皆様、安心してじっくり話をすることができました。本当にありがとうございました!
ペアレンティング・キャンプ2016
おとなプログラムをふりかえって
橋本笑穂