# 017 佐山圭子さん

# 017 佐山圭子さん

5.NBM~物語に添った診療を日常から

医療ではEBM(エビデンス・ベイスト・メディスン=根拠に基づいた医療)、いわゆるエビデンスっていうことがこのごろすごく言われて、疾患ごとに診療方針が固定しているような流れがあるけれど、いっぽうでその限界性も言われていて、NBM(ナラティブ・ベイスド・メディスン=物語に基づいた医療)という考えも起こりつつある。

―詳しく聞かせてください。

ナラティブというのは、ご存じの通り、「物語」。だから、その人自身の物語から起こってくる、病気への考え方や、その背景にある人間関係まで含めた全人的なアプローチをしていこうという考え方です。もし仮に、その人の疾患には必要な医療であっても、その人を幸せにするかどうかは違う、っていうところで、その人の価値観に沿った、その人の物語に沿った医療っていうものをしていこうっていう流れだと思います。それを私はすごく納得しているので、それぞれの医療とか、それぞれの子育て、それぞれのお産、それぞれに満足できるっていうものを大事にしたいっていうのが、私の信念なんです。

―佐山先生がよくおっしゃっている「医療は、ただ受け取るものではなく、医師とのコミュニケーションが大切。それによって、ときには処方箋も変わってくる」というおはなしに通じるところでしょうか。これはすごく大切なことだと日々、実感しています。
ただ、現状でいうと、自分が暮らしのなかで行きやすい場所にある小児科に駆け込むしか選択肢がなかったり、そこで満足できるコミュニケーションを育むことも難しかったり、ときには薬も先生のクセみたいなところで処方されてしまったりという部分が、ありますよね。

そうね。そこのところをなんとかしようっていうのが、外来小児科学会がいま考えているところだと思う。でも、外来は担う医師も結構つらいものなのよ。
もっと「もう少し様子を見てこうだったら来て、こういう感じだったらおうちで様子を見ていてもいいよ」っていう、基礎的な情報を伝えるのが、医療の一番大事な部分じゃないかって思うんだけど、忙しいとそれはできない。そもそも、お母さんは、薬がほしくて来てるんでしょう、って思っている医師は、意外と多いから、そうなるとどうしても、(処方箋を)書いて、体重で計算して、っていう流れに終始してしまう。あとは、複数人でやっている外来だったりすると、一人で違うこともできない、とかね。
私自身、外来をしていた最初のころは、「お薬をもらいにきたんでしょう?」とつい、思ってしまっていた。「知ろう小児医療守ろう子ども達の会1に集うお母さんたちと話をするようになって、「あっ違うんだ(薬をもらいに来ていたわけじゃないんだ)」って、必要がなければないって言われて安心したいんだ、って、はじめて気づくことができたんです。サービスじゃないけど、こんなに待って来てくれたんだから(薬を)出さなきゃっていう気持ちが、私にはずっとどこかであったんだなって思います。

―お土産を持たせるわけじゃないけれど(笑)

そうそう(笑)、本当は違うんだけどね。ただ実際に、「この薬がないと不安」っていうお母さんもいるの。そういうお母さんに出会うことも医者は多いから、出してあげなきゃっていう風につい思っちゃうの。そうじゃないお母さんも結構いるんだっていうことに、最近になって気づかされましたね。

  1. 「お母さん(お父さん)の目線」を大切にしながら、子どもの病気や医療についての情報を発信、共有することを目的とした一般社団法人。佐山医師は会で講師などを担当する協力医を勤めている

プロフィール

佐山圭子(さやまけいこ)
小児科医・ひだまりクリニック院長
和歌山県立医科大学卒業。国立国際医療研究センター、静岡県立こども病院、立正佼成会附属佼成病院、まつしま病院、都立広尾病院等を経て、2011年ひだまりクリニックを開業。現在は、子育てに関する会のほか、妊産婦や産後の母の心をケアするグリーフサポートの集いや、赤ちゃんを亡くされた家族の会(託児も可能)、家庭内のDVに関する講座等も行っている。
http://hidamariclinic.jimdo.com/

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