# 017 佐山圭子さん

2.「できること」に寄り添って

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ひだまりクリニックにて開催された「ひだまりクラス」の様子

―ひだまりクラスは現在、どのような形で行われているのですか。

発達の段階に応じた「ねんねクラス(首がすわるまでの赤ちゃんと母。妊婦も参加可能)」、「だれでもクラス(寝返りができるようになった、概ね5カ月頃からの子と母)」、「あんよクラス(歩き出したころ。自我がしっかりできてくるころの子と母)」という3つのクラスのほか、産婦人科医や薬剤師、助産師などの専門家を招いた「ひだまりスペシャルイベント」という会を定期的に行っています。これまでの経験上、一方的にこちらから情報をお伝えするというよりも、まず自己紹介をしてもらって、それぞれの具体的な、リアルな悩み事を話題にしていただき、その場の多くの人の体験談をシェアしていただいたり、専門家として整理したり、ということを、発達に応じたクラスでは心がけています。単純な答えはないですし、私も答えをいいません。いろんな経験・方法があって、そのほうがやっぱり、お母さんの満足度が高いのよね。私も勉強になります。

―話す際に、心がけていることはありますか。

「正しいこと」と、「できること」は違う、っていうことかしら。子どもの成長のため、健康のために、やってほしいことはいろいろある。早寝早起きとか、食事や栄養のこととかね。けれど、お母さんにはお母さんの背景があるし、理想通りにはできないことだってある。だから、正しいことは目標に据えながらも、できることにまず寄り添っていくことが大切だと思っています。
たとえば、母乳育児についてもね、明らかに(母乳が)出ていないようなんだけど、どうしてもミルクを足したくない、っていう人もいるのよね。ミルクも足そう、って話して、理解してくれる人もいるんだけど、どうしてもっていうお母さんもいる。そういう方にはとにかく頻繁に来てもらって、赤ちゃんの体重を測りながら、どういう風に考えてやっていきましょうか、と相談していく。こだわりが強いと、それはそれで大変なんだけれど、でもその過程を否定したら、その人が一生消えない傷つきを抱えることになるかもしれないのよね。お母さんたちはそれくらい、追い詰められた精神状態で必死でやっているから。だからすごく難しい判断なんだけど、私はやっぱり、お母さんの自信につながることを支えていきたい。私自身が、二人目で納得のいくお産ができるまで、自信を持てない母だったから。(自信を持てない)その気持ちが、とってもよくわかるから。2015年の10月からは、母乳育児支援も本格的にしていて、助産師さんも活躍してくれています。

Profile

佐山圭子(さやまけいこ)
小児科医・ひだまりクリニック院長
和歌山県立医科大学卒業。国立国際医療研究センター、静岡県立こども病院、立正佼成会附属佼成病院、まつしま病院、都立広尾病院等を経て、2011年ひだまりクリニックを開業。現在は、子育てに関する会のほか、妊産婦や産後の母の心をケアするグリーフサポートの集いや、赤ちゃんを亡くされた家族の会(託児も可能)、家庭内のDVに関する講座等も行っている。
http://hidamariclinic.jimdo.com/