2.気持ちに寄り添う
―保育中に時々メモをとられていましたが、どんなことを書き留めているんですか?
本城:その場でメモをとらないと忘れてしまうので、一年くらい前からメモ帳を持ち歩いて子どもたちの様子を書くようにしています。それまでも、保育の記録はつけていたんですが、すぐに書かないと、内容が薄くなってしまうんですよね。メモをとるようになって、子どもたちの様子がこれまでよりもずっと見えてきたように思います。
―メモに書き留められた中で、印象に残っているシーンがあれば教えて下さい。
本城:二月後半の暖かい日は、氷が水になりかかる時期で、ベチャベチャしているし、冷たいし、一年で一番しんどい時なんです。AちゃんとMちゃんが遊んでいたら、Aちゃんが手がつめたくて泣き始めたら、MちゃんがAちゃんと向い合って、Aちゃんの両手を自分の両手でくるんであげていたんですね。大人だったら、手が冷たいという状況を解決しようとして「手袋替えたら」とか「あたたかいところにおいで」と声をかけてしまうと思うんですけど、Mちゃんは、Aちゃんの冷たくてつらい気持ちに、自分の手を差し出して、黙って寄り添ってあげていた。状況ではなくて、気持ちに寄り添っていたんだと思うんです。その光景を見た時に、自分はこういう寄り添い方ができているのかなぁ、子どもはすごいなぁと思いました。
大人は、自分がどう見られるだろうかとか、いろいろ考えながら人と関わってしまうことが多いと思うんです。でも、二、三歳の子は、自分がよくみられたいとか、そういうことは考えなくって、相手の気持ちに寄り添うことができるような気がしますね。
―身体も心も大きく変化していく二歳の一年間を、うまく乗り越えていくためにも、三歳ではなく二歳から関わることが大事だという想いから、ぴっぴでは、二歳からのみ入園できる仕組みになっていますね。本城さんは、二歳児の保育について、どんなふうに感じられていますか?
本城:おむつがとれたとか、言葉でやりとりできるようになったとか、劇的な変化のある一年に居合わせることができることは喜びだと思っています。ダイナミックな変化に対して、大人がどう関わり、支え、見守ることができるかというのは、すごく丁寧にやっていく必要があると思っています。
例えば、服が濡れていても着替えたくないという子もいます。おかあさんにしか着替えを手伝ってもらいたくない、その子の気持ちも大事にしたいと思うから、しばらくは、本人が冷たくても我慢出来るんだったらと、そのまま着替えなかったんですね。でも、一度その子が焚き火につっこんでしまって、やけどにはならなかったんですけど、僕が抱きかかえて水をかけて、ずぶぬれになったことがありました。ずぶぬれになってはじめて「自分で着替える」って言って、それからは服が濡れたら自分で着替えるようになったんですね。半ば強制的に着替えさせる、という方法もあるけれど、それがその子にとっての安心につながるのか、よりほぐれた感じになるのか、ということは別のことなんですよね。二歳児に対しては、身体の奥からの「感じ」を特に大切に尊重してあげたいと思っています。