5.全速力で逃げる

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―人生で岐路に立たされた時、大事にしていることなどがあれば教えて下さい。

本城:僕は何かをはじめる前に何かをやめているんですね。日本興業銀行に入ることをやめて、三木谷さんと事業をはじめたし、30歳になったときに楽天をやめて、教育の世界に飛び込んだ。ぴっぴだって、全寮制の中高一貫校をつくることをやめて、参加しました。何かをはじめる前には必ず、何かから全速力で逃げているんですよね。

動物は、基本的には闘わないで逃げる習性をもっていると思うんです。もちろん、子どもが襲われた時とか例外はあるでしょうけど、逃げることが生き延びるために一番有効な方法なんですよね。でも、人間は何かつらいことや苦しいことに出会った時に、そのことに立ち向かって、乗り越えなければと思ってしまう。僕は、動物として、立ち向かうよりも逃げることの方が自然なことだと思うんです。逃げることが立ち向かうよりも楽かというとそんなことはなくて、逃げるためには体力も必要だし、危険が迫っていないかを推し量るための動物的な勘や観察力を持ち続けていなければいけない。逃げることで、周りの人に迷惑をかけたり、誤解を生んでしまうこともあります。でも、人からいろいろ言われることがあったとしても、誰かにきれいに説明することを目標に生きているわけじゃないんだから、自分自身が納得していればそれでいいんだと思います。周囲からの評価や見え方を気にしていたら、結果それに頼ってしまって思考停止に陥っていまうことがありますよね。
例えば、僕は「イクメン」と呼ばれることがあるんですけど、状況が許しているから、子育てをしているわけで、仕事したければ徹底的に仕事すればいいと思うし、育児に向いていないとか、したくないと思えばしなくていいと思うんです。「イクメン」という言葉や枠組みに寄りかかることで、どこか安心感を得ようとしているように思います。他人のものさしのほうが正しいんじゃないか、より高級なんじゃないかと思ってしまうと、自分のものさしの出番はなくなります。でも、自分のものさしで物事を測ることができれば、振り回されなくてすむようになるんです。そのためには、他人のものさしを自分から手放すしかないんですね。手放すのはとても勇気がいることですけど。手放してはじめて、見えてくることがあると思います。

―今日は本当にありがとうございました。


森のようちえん ぴっぴ
園舎を持たない野外保育の活動として2007年4月にスタート。「ありのまま」「ゆったり」「ひろがる」「わかちあい」の4つを大切にし、自然のリズムの中で豊かな保育を行なっている。自我が芽生え、様々な感情が豊かに育っていく2歳児からのみ入園できることも特徴のひとつ。

◯森のようちえんについて
1950年代にデンマークやスウェーデンで自主的な保育活動としてはじまる。その後ドイツで急速に拡がり、園舎を持たず、毎日森へ出かけていくスタイルが定着する。日本では、園舎を持つようちえん、持たないようちえんとスタイルはいろいろあるが、自然体験活動が心身の発達に良い影響を与えるという考えと子どもの感覚や感性を信じ、引き出すような関わり方を実践しているところが多いとされる。
参考:森のようちえん全国ネットワーク