この本は小さなうさぎの男の子とお母さんの会話を描いたお話です。
うさぎのバニーぼうやはおかあさんに「ねえ、おかあさん、いいこってどんなこ?」と聞きます。
泣かないのがいい子なのか?
怒ったり、ばかなことばかりする子は嫌いか?
もっと顔がかわいい子がよかったか?
一生懸命にお母さんに問いかけます。そのたびにお母さんは、泣いてもいい、怒ってもいい、ありのままでいいと伝えます。
私が読んでいてハッとするのは、子どもの質問の変化です。一番最初の質問では、バニーぼうやはどんな「性質」の子どもが「いい子」なのかをお母さんにたずねています。自分がどう振る舞えばお母さんが嬉しいのかについて知ろうとしているのです。ですがお母さんの答えを受けるうちに、だんだん質問の仕方が変わっていきます。
「ぷんぷん おこっている ぼくなんか、おかあさん きらいでしょ?」
「ぼくが ばかなことばっかり してると、おかあさん いやに なっちゃうよね」
「びっくりするような おばかさんでも?」
「ぼくが もっと かわいいこなら おかあさん、うれしかった?」
当初子どもは「どう振る舞えばよりお母さんからの愛情を得られるか」に関心を持っていましたが、後半ではお母さんからの愛情については確信を持った上で「どれくらい自分のことが好きか」を追及しています。
一見、挑発的にも受け取れるような後半の質問ですが、このグングンお母さんに迫ってくるような変化に、子どもがお母さんからの愛情に確信を深めていることが分かります。
この絵本を読んで私がいつも感じるのは、子どもが親を求めるエネルギーの強さです。一般的には「母は強し」「親が子を思う深さは…」のように親の一途さについて語られることが多いですが、実は私は常々逆ではないかと思っています。
他のお父さんお母さんはどうか分りませんが、少なくとも私は子どもへの「無条件の愛情」をもともと持ち合わせているわけではありません。忙しかったり、疲れていたり、仕事で落ち込むことがあった日には娘への関心がつい低くなることも。ですが娘はいつも全力で親の愛情を求め、全力で親に愛情を注いできます。そして私は、娘のそういうまっすぐなエネルギーに支えられてなんとか親に「なってきた」気がしています。
私はこの絵本を読むたびに、子どもが親を求めるエネルギーをまばゆく感じ、子どもの存在をありがたく思います。
一番最後のバニーぼうやのおかあさんの言葉
「バニーは バニーらしく していてくれるのが いちばんよ。
だって おかあさんは、いまの バニーが だいすきなんですもの」
このセリフを読む時、バニーぼうやのおかあさんの気持ちがとてもよく分かります。ありのままのあなたで、まっすぐに、ありのままの私を求めてくれてありがとう。きっとバニーぼうやのおかあさんは、そういう気持ちで、バニーぼうやを抱きしめているのだと思います。
「いいこってどんなこ?」
子どものことをもっと好きになる素敵な絵本です。
是非読んでみてください。
(橋本笑穂)
『いいこってどんなこ?』
冨山房刊
ジーン・モデシット文
ロビン・スポワート絵
もきかずこ訳