5.思い出すのではなく、対話すること
—子ども時代との対話についてもう少し詳しく聞かせてください。
紘良:日本では、大人と子どもの文化をわける風潮があると思うんですけど、ヨーロッパでは大人と子どもが繋がっている感じがしたんです。大人と子どもが断絶されてしまうと、自分の子ども時代と対話ができなくなってしまうんじゃないでしょうか。
もっとみんな、自分の子ども時代と対話したほうがいいと思うんです。思い出すのではなく、対話するのが大切なんです。対話すると現在の自分の価値観が壊される可能性も出てきます。そういうことも含めて、対話するってことが大切だと思っています。「おまえどんなことが好きだったんだよ」とか、自分の子ども時代にどんどん問いかけることが出来れば、子どもにとって外さない行動がとれると思う。子どものためのものづくりもそうですよね。キャラクターものにしても、大人が自分の子ども時代に戻って、つくっているようには見えません。自分の子ども時代に戻って、そこからつくりあげたものにはおもしろいものがあると思いますが、そういうものになかなか出会えません。
保育についても、どこかから拝借した保育論じゃなくて、子ども時代と対話しながら、自分が感じてることを子どもたちにシンプルに伝えていけばいいと思っています。
美和:子育てしていると、子どもが自分の性格と違っていてうらやましいなと思うことがあるんです。そういうところを「紘良さんにそっくり」って言われたりすると、わたしは紘良さんの子ども時代にも我が子を通して会えていることになるんです。子育ての中で発見することもまた自分の子ども時代との対話なんだと思います。
—最後に子どもに関わる人にとって大切な姿勢について教えてください。
美和:目線をあわせることだと思います。子どもと実際に目線をあわせるのと同時に気持ちの目線もあわせること。
紘良:姿勢を正すこと。自分はちゃんと成長してきたぞということを見せることが大切です。大人も小さい頃があって成長してきているってことを伝えることは、子どもたちにとって自信になると思う。教育者として正しいとかじゃなくて、ぼくはぼくとして生きてきた、それが正しいんだということを伝えたい。だから、君も君の正しい道を生きて欲しいということを伝えられたらと思っています。
ー今日は本当にありがとうございました。