3.育てたものを食べる
-秋田 森のテラスでは、お米や豆類、野菜などもつくられていますね。東京 森のテラスで開催された味噌づくりのワークショップに参加したことがあるのですが、その時に出していただいたお昼ごはんのおいしさが忘れられません。シンプルな調理法でつくられた豆や野菜が、本当に滋味深くて驚きました。
山田:きちっとつくった旬のものは、そのままで十分おいしいんですよ。食べ物をつくることは、人にも環境にも大きな影響を及ぼす営みだと思うんです。秋田 森のテラスでつくった米や豆類などは、東京でも販売しています。とにかく、たくさんの方に届けて、食べていただくことが一番と考えて提供しています。
-実際に食べ物をつくる中で、気付かれたこともたくさんあるのではないですか?
山田:そうだね。例えば、この米は、今年とれたものなんだけど、一部黒くなってるでしょ。農薬を使わないと、カメムシって虫が米を食べるんですよ。そうすると米の色が黒くなって、大体白い米に3割くらい入っちゃう。日本の風土の中で、農薬を使わないで米づくりをすれば、黒い米が出てくるのがあたり前なんです。
-どうして黒くなるんですか?
山田:米が、花を咲かせて受粉するでしょ。そうするともみ殻の中が乳化して、お乳みたいに白くなる。カメムシは、もみ殻を傷つけて、乳化した部分を吸う。その分、米は小さくなるし、噛まれたところは黒く残るわけ。
本来、無農薬でつくると黒い米はある程度入ってしまうものなのだから、それを排除しようっていうのは、自然の摂理から考えるとおかしいんですよ。でも、そんなことがあることすら知らない人が多いでしょ。だから、森のテラスでは黒くなった米も食べようっていう運動もしています。わたしたちがつくった米を食べてくれる人から、少しづつ現状を知ってもらえたらと思うんです。
-黒いお米は、白いお米とどんなふうに判別されるんですか?
山田:昔は、黒いお米が入ってるだけで商品にならないと農協は判断していたんだけど、今は、機械で判別して黒いお米をはじけるようになっています。だから、食べる人のところに黒いお米が届くことはまずないんだけど、はじかれてしまうということは収穫量そのものが落ちたということだし、もし農協に出荷した後に見つかればその米の等級は下がってしまう。いずれにしても農家の収入に直接ひびいてくるわけです。だから、農家の人からすると、たくさん農薬を使うことで多く回収出来たほうがいい、ということになるんじゃないかな。みんな別に悪気があってそうしてるんじゃなくて、そうやらなきゃならないと思ってやってるだけの話なんだと思う。それで、農協に農薬散布した日と量を書いて提出するんだけど、それも自己申告だからね。
-自己申告なんですか。
山田:そう。農家の方たちの良識の上に成り立ってると思う。スーパーで安売りされているお米って、炊いてから3、4日経っても、白いままなんだよね。うちでつくったお米なんかは、大体一日経てば黄色くなるんです。でんぷんだから変色するのは、当然なんだけど。
なぜそういうことが起きるのか、しっかり勉強しなきゃいけないよね。大人は、自分たちの身体をつくる食のことを子どもたちに伝える義務があるから。良い悪いじゃなくて、本当の姿を伝えないといけない。そういうことも含めて、秋田から発信したいなと思っているんです。