#020 片岡佳奈さん

2. いつか笑えるのだから

アサヒ薬局には、アーティストとして活動しているスタッフもいる。薬局で小さな音楽会が開かれることもある。

―週末にはここで音楽会や絵画教室もやっているのですね。

そうです。日曜日に、ここにあるものを全部となり(旧薬局)に運んで、茶話会をやったり。音楽会は、ピアノがとなり(旧薬局)にあるからとなりでやったりしています。子どもたちはこっちで遊んで、大人はこっちで話すという時もあります。

―どんな風に始まったのですか?

最初は茶話会です。うちは普通の薬局とは少し違っていて、お母さんたちと本当にゆっくり話をするの。そして、色んなお母さんたちとお話をしていると、お母さんがボロボロ泣いて「はっ!今のは、何だったんだ?」という感じになることがよくあります。私は、父のケアをしていた頃、精神障害に対する恥の意識のようなものが心のどこかにあって、大変だけどそれを人には言えなくて、嘘ばっかりついて、本当の自分はどこなんだろう?って。そういう苦しさをずっと感じていました。だから、お母さんたちと話をする中で、障がいのある子どもを育てる家族が、人には言えない気持ちを抱えていることが見えてきました。でもお母さんたちの話を聞いていても、その悩みの深さに、私自身が苦しくなってしまって、どうすることもできませんでした。無力感。やるせなさ。そういう苦しさの中で、どうやったらいいかは分からなかったけれど、分からないなりに、子どもたちとその家族が孤立しないようにしたいと思い、障がいのある子どもを育てる家族のための茶話会を始めました。

最初は茶話会をやっても、みんな泣いてばかりで、会は終わってもみんな泣いていて、泣いているままのお母さんたちを送り出すような感じでした。でも、そういった茶話会を重ねていく中で、障がいのある子どもを育てた経験のあるお母さんたちとの素敵な出会いがありました。すごく苦しい時期を乗り越えて、障がいのある若者と笑って暮らしているお母さんたちを見ていたら、「いつか笑える日が来るんだ」って。いつか笑えるんだったら、もう少しのびのびできるんじゃないか、という感じになっていきました。
「私が死んだらこの子はどうなるのだろう?」というのは、障がいのある子どもを育てる親の多くが悩む、みんなの課題です。だけど、親の中には、きっと大丈夫!と思って育てている家庭もあります。社会とのつながりをつくったり、いい人と出会っていったり。そして、そういう家庭で育った若者の存在は本当に希望になります。活き活きと楽しそうに絵を描く青年、素敵なアクセサリーをつくる女の子、会うと元気になるんです。
世の中にはどんな強く願っても変えられない困難があって、そういう困難をたくさん抱えて生きている人もいる。でも、そこからちょっとでも光を見るためにはどうしたらいいか?孤立したり、停滞したり、恥を感じていたりするときに、そこからなんか少しでも前に動いていくためのきっかけをつくりたい。今辛くて苦しい状況であっても、こういう子どもと自分でいいんだって思えて、今よりも明るい方に進んでいくきっかけをつくれたらいいなと思っています。


茶話会の様子。みんなで輪になって、たくさんの話をする。話は尽きない。