子どもへの初期対応

熊本地震の被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
福岡も随分揺れ、余震も続いておりましたが、家族全員元気です。
大好きな熊本が(被害の甚大な東区に2年ほど住んでいました)あのような事態となり、心が落ち着かないまま日々を過ごしています。
余震が続く中での避難所の暮らしは本当に大変なことだと思います。中でも、子どもたちと一緒に避難されている方々はどうされているだろうか、子どもたちの居場所はあるだろうかと、心配です。

震災後、様々な情報発信がなされている中、本当に微力ながら、子どもに関する情報を第一弾として整理しました。
震災による子どもの心の問題は、災害発生から2ヶ月の急性期、2ヶ月から1年後までの急性後期、1年以降の後期と3段階に分けられるそうです。急性期がもっとも反応が大きく現れるそうです。これから2ヶ月の対応が大事になってきます。

特に役に立ちそうだと思えた、日本子ども虐待防止学会と社会的養護ワーキンググループが東日本大震災後にまとめた「社会的養護における災害時「子どもの心のケア」手引から、初期対応のところを抜粋しました。
社会的養護の子どもたちだけではなく、すべての子どもへの対応に参考になる内容だと思います。

子どもへの初期対応

1)安心感の回復を心がける
子どもの不安や恐怖に共感的に耳を傾け、「怖かったよね」とか「心配だよね」といった言葉を返してあげてください。そのうえで、「もしまた地震が起こったら、~しようね」といった形で、現実的なプランを話し合ってください。その際、「絶対に起こらないよ」といったような非現実的なことは言わないようにしてください。重要なのは、子どもが「対処できる」という感覚を持つことと、「○○○さんがついていてくれるから安心」といった、大人からの保護を期待できることです。

2)過去と現在の違いを明らかにする
しばらくの間は余震が続きますが、「小さな地震は続いているけど、一番大きな地震はもう終わったんだ。だから、今はもう安心していいんだ」と教えてあげるといいでしょう。その際には、本震と余震という地震の仕組みを子どもにわかる言葉で説明してあげることが役立つ場合もあります。

3)罪悪感を扱う
幼児期から小学校低学年にかけての幼い子どもたちは、良くないことがおきると、「自分が原因」と思う傾向があります。子どもが今回の災害に対して罪悪感を抱いていないかを見極めることが大切です。子どもの言動から、「もしかしたら…」と気になることがあれば、子どもが罪悪感を持っていないかを尋ねてみてください。その際には、たとえば、「あのさあ、この前、すごく大きな地震(津波)があったよね。あなたくらいの歳の子って、ときどき、『ぼくが悪い子だったから、こんな大変なことが起こったのかもしれない』って思うことがあるんだけど、あなたはどうかな?」といった聞き方をするといいでしょう。

4)自分の反応は普通のことであると理解できるように支援する
震災など、心身の安全が脅かされるような出来事を経験した場合、その直後から数週間はさまざまな心理的、精神的反応が現れることは珍しくありません。こうした反応が子どもに見られた場合には、それは決して「異常」なことではなく、普通の反応であること、時間の経過とともにやがて落ち着いてくることを子どもが理解できるように援助しましょう。たとえば、昨日と今日の反応の強さを子どもに比較してもらい、少しずつでも「回復」してきていることを自覚してもらうといった方法もあります。

5)子どもの活動を確保する
子どもは、大人が思う以上に周囲の状況に敏感なものです。震災やその後の混乱という非日常的な事態への対応に大人たちが追われているのを見て、子どもは不安になったり、あるいは、「大人はみんな大変そうだから、自分のことで余計な心配をかけてはいけない」と考えて困ったことや心配事があっても我慢してしまうことが少なくありません。このように、子どもにとっても、震災後の生活は大きなストレス因となるものです。こうした子どもたちには、体を動かして抱え込んだストレスを発散できるゲームやエクササイズなどの活動が助けになります。

6)子どもの自発的な表現は遮らないで受け止めてあげる
子どもは、遊びや、それに伴う会話を通じて、さまざまな感情や考えを表現し、少しずつ心の安定を取り戻していくものです。こうした遊びや表現を目にしたら、災害時の子どもの恐怖や絶望感を共感的に汲み取って、「いっぱい揺れたよね、怖かったよね」といったふうに言葉にしてあげてください。そして、「過去と現在をわけること」の項目で述べたように、「今はもう安心」ということを子どもに伝えてあげてください。

7)生活の見通しを持たせる
災害後の初期段階では、予定や見通しが全く立たないといった状況におかれることは少なくないでしょう。そんなときでも、ほんの短期間の、少し先のことでもわかることがあれば、それだけでも子どもにとっては「見通し」となるものです。

8)子どもに適切な情報を提供する
同じ衝撃的な体験であっても、何が起こったか、あるいは起こっているのかを理解できているのとできていないのとでは、子どもに与える心理的なダメージには大きな違いがあるものです。そのため、地震や津波などがどうして起こり、現在、どのような状態になっているのかを、子どもに理解できる言葉で丁寧に説明することが重要です。

また、子どもと一緒に被災地で生活されている方、現地で子ども支援の活動をすることを検討されている方向けの情報として、以下の3つの情報も、参考になさってください。

『子どもにやさしい空間ガイドブック』(2013年 国立精神神経医療研究センターと日本ユニセフ協会が共同制作)

災害や紛争などの非常時において、子どもがこどもらしく心身ともに安心安全にいられるような場づくりについてまとめられたガイドブックです。避難所や保育場所の環境整備の参考になる情報が掲載されています。

『子どものための心理的応急処置
強いストレスを受けた子どもたちが、自分たちのペースで落ち着きを戻せるためのサポートの仕方について書かれた記事です。被災した子どもとのコミュニケーション、声掛けの参考になるかと思います。

『災害時の乳幼児栄養に関する指針 改訂版』(2011年 母乳育児団体連絡協議会)
もともと母乳育児をしている方が災害時に母乳育児を続けるために必要なことについて書かれています。
また、災害時に安全に粉ミルクを与える方法として、コップで授乳する方法が写真付きで解説されています。

(遠藤・橋本)