# 014 深津高子さん

# 014 深津高子さん

3.幸せに生きるヒント“知的自立”

-モンテッソーリ教育は日本では幼児教育として捉えられていますが、海外にはモンテッソーリの中学や高校もあるそうですね。

深津:ええ、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、メキシコにはモンテッソーリの中学校や高校まであるところもあります。
モンテッソーリ博士は赤ちゃんだけでなく人間そのものをずっと観察していました。その中で人間が顕著に育つのは0から24歳までで、その中には0~6歳、6~12歳、12~18歳、18~24歳という4つのフェーズがあることを発見しました。各段階の子どもたちには独特の特徴やニーズがあります。例えば就学前はバーチャルな画面ではなく原体験からしか学べず、五感を通して環境を吸収していきます。また手や身体を使って自分の動きの調整をする大切な時期。
小学校は幼児期に蓄積した原体験を統合し、イマジネーションが旺盛になる時期。例えば「なぜ恐竜は絶滅したのか?」「温暖化が進むと地球はどうなってしまうのか?」というように目の前に具体物がなくても、想像力を使って、頭の中で過去や未来を自由に行き交えるようになります。
そして12~18歳の時期を、モンテッソーリ博士は社会的新生児と呼び、ホルモンの影響で精神的にも身体的にも大変革を起こす不安定な時期だといいました。前半の中学校はアードキンダー(erdkinder:ドイツ語で「大地の子」という意味)という寄宿舎で、家庭から離れ、友達との関わりの中で共同生活を営みます。この時期になると子どもたちは、仲間と一緒に議論し、ルールを決め、自分たちでかなり大きなプロジェクトを進めることができます。自分たちで種から植物を育て、それを食べる自給自足の生活をしながら、余剰野菜を売ることで町の人とのマイクロエコノミー(小規模の経済活動)を経験するのです。お金は天から降ってくるわけではなく、どう循環させていくのか?本当の社会に出る少し前の安全な場所で、金融の仕組みを学ぶのです。
例えばメキシコのアードキンダーでは、近くの先住民が色々なハンディクラフトを作っているのに売れないということに着目し、カメラが得意な子がその写真を撮り、PCが得意な子がネット販売を手伝うというフェアトレードプロジェクトをやっていました。自分たちにできることを見つけて、自主的に社会に働きかけるという意味で、非常に素晴らしい取り組みだと思います。

-自給自足と聞いて一瞬、一般の資本主義社会から切り離されたクローズな学校をイメージしたのですが、そうではないんですね。

深津:ええ、子どもたちは自分たちができることで社会をよくしようと積極的に動きます。そして彼らは中学生の時にそういう風に社会に関わっているので、その後の進路選択も非常に明確です。「自分はこういうことがしたいけれど、この部分が弱いからこれを学ぼう!」と具体的な人生計画が立てられやすくなります。

モンテッソーリ教育では小さな頃から自己選択の機会を与え、その結末の責任も自分で引き受けます。例えば、たくさんある教具の中から「今日は洗濯しよう」と選んで、終わったら自分で片付ける。そういう風に自分で判断し、選んで、次の人のために元に戻すという体験の積み重ねが、社会性のある子どもたちを育んでいるんだと思います。
自分のクラスにいた卒園児たちを見ても、海洋生物保護やモンテッソーリ教育に携わったり、何屋さんになっても、みんなハッピーだし、ものすごくマイペース。周りが皆「クラブ活動はサッカー」って言っても「私は合気道」みたいに。みんなと一緒というよりも「自分は本当にこれがやりたい」というように選択の軸が自分にあるように思います。これをモンテッソーリ教育では“知的自立”と言うのですが、今こそ知的自立が重要だと思います。3.11の後、私たち国民はすぐに知らされるべき情報を、後で知らされるといったことが何度もありました。こういう時こそ、誰かの指示を待って動くのではなく、「何かおかしい!」と感じること。自分で調べ考えることがものすごく大事です。そしてそのためには感覚が鋭敏であることがすごく重要になってきます。
人と仲良くする、やさしい人になることももちろん大切ですが、私はこれからの未知なる世界を生きていく上で大事ことは、知的に自立し、それをちゃんと発言できることだと思っています。本来子どもは「王様は裸だ!」とまっさきに叫んでしまう存在だと思うのですが、育つ過程でそういう大切な部分が消されたり、つぶされたりしてしまう。知的に自立した子がどんどん育っていかないと、また理不尽なことが起こってしまうような気がします。

そのためにも私たち大人は、子どもが自分で考えたり、自己表現ができる環境を保証していかなくてはならない。ですからモンテッソーリ教師も、目の前の子どもに教具を提供するだけじゃなく、もっと世界の動向も知った上で、子どもにとってどんな社会が望ましいのか、どんな街づくり・コミュニティづくりをしたいかを見据えながら日々の保育を実践しなくてはならないと思います。

円柱を見て、触って、太さの順に並べる

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プロフィール

深津高子(ふかつたかこ)
保育アドバイザー。国際モンテッソーリ協会(AMI)公認教師、同協会元理事。

教師養成コースの通訳や講演などを通して、モンテッソーリ教育の普及に関わるほか、一般社団法人AMI友の会NIPPON副代表、ピースボート洋上『子どもの家』アドバイザーも務める。

 

Index

  1. 生命が育つお手伝い
  2. 文化を手渡す仕事
  3. 幸せに生きるヒント“知的自立”
  4. あるがままの世界から学ぶ
  5. 私は宇宙に住んでいます

 


インタビュー日:2013.12.18 @国分寺・カフェスロー
インタビュアー:橋本笑穂

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