#011 伊垣尚人さん

3. 居心地のいいクラスへ

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-教室にあるベンチについてお聞きしたいのですが、これはどのように使われているのでしょうか?

伊垣:イエナプラン教育では、子どもたちがグループリーダー(教師)と共に輪をつくって話しあう「サークル対話」の時間があります。登校してまもなく行う「始業のサークル」では、その日の伝達事項や家であったことや昨日したことなどを話します。「下校時のサークル」では、その日の出来事をふりかえったり、簡単なゲームをしたりします。輪になると、誰の顔も同じように見ることができるので、リラックスした雰囲気になりやすいんですね。最初は、床に座るようにしていたのですが、途中からの参加者が入りにくかったり、姿勢がつらく集中が続かないので、ベンチ型の椅子を手作りして使うようになりました。使わない時は、折りたたんで教室の隅に片付けられるんですよ。

-サークル対話の効果について、教えてください。

伊垣:サークル対話は、学校の中で子ども同士、教師との間での信頼関係を築くだけではなく、仲間に対して自分の意見や立場を説明する、仲間が意見を説明する時に耳を傾ける、考え方が違っていても仲間として尊重しながら意見を述べるなど、民主的な話し合いの決まりを身につけるためにも効果があります。それから、大きな声で話すのではなく、リビングルームで話しているくらいの大きさの声で対話することの影響なのか、クラス全体のやりとりが落ち着いてくるように思います。

-クラスのチームビルディングのために、取り入れている活動があれば、教えてください。

伊垣:アメリカではじまったプロジェクト・アドベンチャー(PA)という、参加者の自主性や協調性を養う野外活動を中心としたプログラムがあるのですが、子ども同士の信頼関係をつくるために、内容や時期など丁寧に考えながら、特に一学期にこのプログラムを取り入れるようにしています。遊びの中で、子どもたちの関係づくりができること、クラスの雰囲気を盛り上げてくれることなど、クラスづくりには有効な手法だと思います。初期以外にも、息抜きが必要な時など要所要所で活用しています。

-廊下に本棚がずらっと並んでいますが、同じ本が2冊以上あるのはどうしてですか?

伊垣:本棚も自分でつくって、置かれている本も自分で少しづつ購入して増やしてきたものです。廊下の本をグループ4人で同じ本を一緒に読み進めたり、ペアで読み進めたりするので、4冊か2冊、同じ本を揃えています。「この場面ってこんなイメージだよね」「こんなふうに感じたよ」という感じで、みんなで同じ本を読んで考えたことを共有します。教科書も使いますが、子どもたちが自分で選んだ本で進めた方が効果が得やすいと考えています。

廊下に設置された本棚
廊下に設置された本棚

Profile

伊垣 尚人(いがき なおと)1977年生まれ。東京都出身。埼玉県狭山市立富士見小学校教諭。YMCAのキャンプリーダーや不登校児童・生徒の学校復帰の支援活動などを通じて学校現場に興味を持ち、通信教育で教職の道へ。NPO法人Educational Future Center理事、西脇KAI代表幹事、Learning Association of Facilitative Teachers主催、日本イエナプラン教育協会会員。著書に『子どもの力を引き出すクラス・ルールの作り方』『子どもの力を引き出す自主学習ノートの作り方』『子どもの力を引き出す自主学習ノート 実践編』ノートは友だち!1〜3』『プロジェクトアドベンチャーでつくるとっても楽しいクラス』がある。