#011 伊垣尚人さん

#011 伊垣尚人さん

2.主導権を子どもたちに

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-現在の実践について伺いたいのですが、教室をぐるっと見回してみると工房のような雰囲気がありますね。先生の席が後ろにあって、席はグループごとになっていますが、一斉授業はされないんですか?

伊垣:一斉授業ではなく、グループワークを基本にしています。それぞれのペースでそれぞれの課題をやっていきます。教室のレイアウトも子どもたちが決めました。

-なぜ子どもたちに決めさせるのですか?

伊垣:教室環境は先生がつくるもの、という考え方が根強くあると思うのですが、それだと教室環境への子どもの参加度が低くなって、「先生の教室」になってしまいます。自分たちが学ぶ環境は、自分たちが考えてつくる。そういう考え方が育っていくと、学習に積極的に参加するだけではなく、場所への主体性が生まれていくと思います。具体的には、「学びやすい教室ってどんな教室?」と呼びかけて、子どもたち自身に考えてもらうと、話し合いがしやすい環境、ということで、グループの形が採用されることが多くなりますね。いつでも相談したり、協力しあえることが学びの力になるということを、子どもたちは自然と感じているんだと思います。
こちらからは、教室の中にリビングルームのようなスペースをつくることを提案しています。教室の一角に、マットやゴザなどをひいて、くつろげる空間があるだけで、あたたかい雰囲気をつくってくれます。子どもたちがレイアウトを決めることによって、教師は、教室レイアウトに応じて授業スタイルを柔軟に変えていく必要に迫られますが、できること、できないことなどの条件も押さえながら試みていけば、ある程度の実効性の高い教室環境を実現することができると思います。

-一斉授業型とグループワーク型、それぞれの特徴を教えて下さい。

伊垣:一斉授業という授業スタイルは、構造上、一方的な情報伝達になるので、自分から考えようとする態度が育ちにくいと思います。それから、子どもたち一人ひとりのニーズに応じた学習が確保されにくいという特徴もあると思います。それから、どうしても中位の学力の子どもたちに合わせてしまうことになるため、そのペースについていくことができない子は置いてけぼりになり、もっと挑戦したい子の可能性には蓋をすることになってしまいがちです。休み時間や放課後に個別指導を行うなどして、個別にサポートしたりしますが、それにも限界があります。
クラス全員がわかることを目標に授業を進めていくためには、教師が活躍する授業から、子どもが活躍する授業へと転換していく必要があります。そのためには、教師は「教える」という役割ではなく「場をデザインする」役割を担う必要があります。子どもたち自身が課題を見つけ、その課題について話し合い、意見をまとめ、発表する。そうしたサイクルが機能するような場をどのようにしてつくっていけるかなんだと思うんです。
一斉指導だと単純計算で1時間に1人67秒しか関われない。でも、グループワーク型であれば、教師は子どもたちの様子をみながら、個別にじっくり関わることができます。授業中に不登校の子どもたちのいる相談室に行くこともできますし、発達障害の子どもたちへの個別対応も可能です。実際にやってみると、教師一人が指導するよりも、子どもたち同士の学び合いの方が多様な学びが展開されていくことを実感しています。わからない子が自分から友達に質問したり、わかった子が自発的に教えに行ったり、その役割も内容によって入れ替わりながら、ダイナミックな学びが生まれていきます。

グループワーク型だと、能動的に学ばなければなりません。子どもたち自身で、試行錯誤しながら自分なりのやり方を身につけていくことが大切です。一方で一斉指導だと、先生にいわれたままにやっている、ということが結構多いわけです。子どもたち同士の話し合いを練り上げていくような授業も、もちろんありますけど、そういう授業をつくるための技術は、鍛錬を重ねてやっと身につけられる、というところがあると思います。

-グループワーク型の授業に臨む際に、大事だと思うことがあれば教えて下さい。

伊垣:「子どもは教えないとできない」と思っていたらできません。まずは子どもを尊重して、子どもの力を心底信じることが大切です。それと、学びの責任をしっかりともつこと。今やっている学習のオーナーは自分自身であることを実感できるように、学びを子どもたちに任せることですね。

プロフィール

伊垣 尚人(いがき なおと)1977年生まれ。東京都出身。埼玉県狭山市立富士見小学校教諭。YMCAのキャンプリーダーや不登校児童・生徒の学校復帰の支援活動などを通じて学校現場に興味を持ち、通信教育で教職の道へ。NPO法人Educational Future Center理事、西脇KAI代表幹事、Learning Association of Facilitative Teachers主催、日本イエナプラン教育協会会員。著書に『子どもの力を引き出すクラス・ルールの作り方』『子どもの力を引き出す自主学習ノートの作り方』『子どもの力を引き出す自主学習ノート 実践編』ノートは友だち!1〜3』『プロジェクトアドベンチャーでつくるとっても楽しいクラス』がある。

Index

  1. 学びの多様性
  2. 主導権を子どもたちに
  3. 居心地のいいクラスへ
  4. 20年後、必要な力

インタビュー日:2013.2.26
インタビュアー:遠藤 綾

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