#007 藤田ゆみさん

#007 藤田ゆみさん

#007 藤田ゆみさん インタビュー
自分らしくあるために

原発事故を受けて、小さな子を抱えての東京での暮らしはさらに不自由なものとなりました。不安な思いを抱え、どうしたらいいかわからなくなっていた時、「くらすこと」が企画する母子向けのワークショップに参加しました。ゆっくり呼吸しながら身体を動かした後、みんなで輪になって食事する。それだけのことなのですが、自分の中で何かがほどけていくのを感じました。
藤田さんやスタッフの方たちも共に参加し、ゆるやかに場の空気をつくっていく。その様子を見ていて、藤田さんが3.11以降どんなことを考えられてきたのか、そしてこれまでどのような思いを持って活動されてきたのか、じっくり訊いてみたいという思いに駆られ、今回インタビューさせていただきました。

子どもも大人もそれぞれが自分らしくあるために、暮らしも仕事も思い切って変化させる。たくさん失敗しながら、自分たちなりのやり方をつくる。そのことが家族や自分自身への信頼を深め、多様な関係性を生んでいく。その往復が藤田さんの強さを支えているような気がしました。

1. 本質を考える

— 3.11の直後、どう行動されたか教えていただけますか。

藤田:地震の時、たまたま旦那さんのお母さんもうちに来ていたので、14日の月曜日の朝に同居する私の母も一緒に子どもたちをつれて広島に避難してもらったんです。地震直後から動くべきか考え続けていましたが、13日の日曜日が長女の通う幼稚園の年長さんの卒園式で、その日を終えてから移動させました。計画停電がはじまった日で、駅はすごい列になっていました。数日後に私たち夫婦も広島に避難して、3月末に子どもたちと一緒に帰ってきました。

本当に大丈夫なのだろうかという不安はもちろんずっとあるわけですが、東京に帰ってきてすぐに学校がはじまって、子どもたちは普段通りの生活をしている。その時点で、ここにとどまっていていいのかわからなかったけれど、いまできることをやらなくてはという気持ちで、私を含めて四人の母親を中心に、放射能値の測定や給食の安全性を求めて、署名運動をしました。5日間で700名分くらいの署名が集まって、市に要望書を提出しました。

— 要望書に対して、市の対応はどうでしたか。

藤田:提出した時点では、特に変わらなかったのですが、夏前に市議会に請願書を出した時には、全会派一致で採択されました。でも、給食もとりあえず一回測定しましょう、という感じで、なかなか真剣に取り組んでもらえませんでした。

こういう運動をするのは、すごい労力がいりますね。目に見えない分、もうこのままでいいんじゃないのっていうお母さんもいます。それは、ひとつの防御反応かもしれない。家を持っていたらなかなか動けなかったり、家庭の事情はほんとうにそれぞれです。ひとりひとりがどう選択するかを考える時代なんだと思います。

たまたま仕事で表参道に行っていた時に6万人のデモ隊に出会ったんです。いつもは気を張ってるんですけど、その光景を見た時に涙が止まらなくなりました。こんな時代になってしまったんだな、子どもを病気にしてしまったらどうしようって。いつもは蓋しているそんな不安な気持ちが、大勢の人が声をあげる姿を見て溢れてしまった。消えることのない不安を抱えた中で子どもを育てるのは、とても難しいです。

私たちには夫婦で相談し決めた基準があって、その私たち家族のものさしに則って、動くべきときには動こうと決めています。ただ、せっかく動くならポジティブな場所とタイミングでと思っているので、目の前にあることをしながらも、常にそのことに意識は向け続けています。仕事をはじめ家族を取り巻く状況、そして今回の放射能の汚染による健康への影響がどうなのかはわからないところが多い。それをどう判断するかは、それぞれの家族が自分たちのものさしを見つけて、決めていくしかないことだと思うんです。

だから隣の家族とうちのものさしはもちろん違う。けれどその違うものさしの基準を決して責めたりせず、認め合うことが大事かなって思います。

— 3.11 後のくらすことの活動について教えてください。

藤田:放射能についての勉強会も最初は考えたんですけど、既にいろんなところでやっていたのと、もちろん正確な情報を集めることは大切なのですが、知識を増やすことで、的確な判断をできるようになるのだろうか?と、実際たくさんの勉強会や講演会に足を運んでいき、疑問に感じるようになっていきました。

震災直後、不安な気持ちを友人たちと話し合って、人と思いを分かち合うことで救われたことがひとつ。そして判断しないといけないときに子どもたちを守れるよう、直感を磨くための手助けをしたいというのがひとつ。くらすこととして、そんな二つの提案をしていきたいと考えました。
直感を磨くのに、簡単な方法なんてないと思うんですが、食、身体、心など自分が生きていく上で大事にしたいものごとの本質をしっかり考えることが、ひとつの方法ではないかなと思うんです。

アノニマスタジオでの佐藤初女さんの勉強会の様子 写真:藤田二朗

プロフィール

藤田 ゆみ(ふじた ゆみ)
くらすこと 主宰。ケアワーカーとして特別養護老人ホームにて寮母職に従事し、その後、社会の福祉に関わることは、どのような形でも一生自分の核になるものであるという思いがあったため、もう一つの夢であった出版の仕事をしたいと思い、編集プロダクションに転職。その後、ライフスタイル系カルチャー誌の編集部をいくつか経て出産と子育てのため一時仕事を離れるが、自らの子育ての日々を通し、 2005 年、オーガニックな暮らしやスローな子育てをテーマとした“くらすこと”の活動をはじめる。 子どもは8歳の長男と4歳の長女、2歳の次男の三人。

くらすこと
http://www.kurasukoto.com/

Index

  1. 本質を考える
  2. みんなが育つ場所
  3. 変化しつづける
  4. 人と関わりたい
  5. 与えるよりも守ること

インタビュー日:2011.11.8
インタビュアー:遠藤 綾

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