#006 松本理寿輝さん

#006 松本理寿輝さん

4. 理想を実現するために

―開園までの道程についてお話を伺いたいのですが。

松本:幸運と良縁があったとよく説明しているんですけど、がむしゃらに進めていったらピースがそろっていったという感じです。当然、因数分解みたいなことはして、こういう状況をつくるためには、どのくらいの資金が必要かとかそういうことはもちろん考えてはいましたけど。 中でも、この土地との縁は最大の幸運のひとつですね。初めて来た時から本当によい空気が流れているように思います。

―開園するまでの準備期間はどのくらいありましたか。

松本:具体的に、この場所に落とし込んだのは、二年くらい前のことです。昨年(2010年)の春の公募時に提案資料を出して、夏頃に開園の方向性が定まりました。それまでは海外に視察に行ったり、保育園の経営をお手伝いしたりしていました。

―理想とするかたちを現実に落とし込んでいく作業は大変そうですね。

松本:子どもたちに対し、その可能性を信じることのひとつとして、大人の計画や概念を無思考にあてはめることをしないようにしていますが、それは保育園自体にも言えるのだろうと思います。理想への早道かもしれないからと、あらゆる準備が整っていない中で無理に理想を押し付けると変な成長をするように思います。理想は信じ続けますが、近道はないと考えて地道に歩き続けて行くしかない。本気の場だからこそ、日々いろいろと起こりますが、仲間がいます。

松本:やってみてわかったんですけど、保育園はできるだけ少ない大人で、できるだけ安全安心を確保しながら、いかに多くの子どもを見られるかということを重視している部分があるんですね。両親は働かなければならなくて、誰も面倒を見ることができない子どもたちをできるだけたくさん見てあげたい。だから、どう効率化していくか、ということになっていく。 でも、効率化は一般的には質に寄与しますが、保育の場合はそうはいかないんです。極端に言えば、声かけの仕方について「だめ!」と怒鳴れば、子どもはある程度コントロールできるから、そういうふうにしてなるべくみんな同じ行動をするように促す。その方が保育者は楽でしょう。だから、しつけと称して子どもを尊重していないように映る発言をしてしまうことはないだろうか。はじめて会った大人の人に「ここに座っちゃだめ!」とは言わないのに、子どもに対しては言ってもいい空気があったりする。でも、大人にはしないのに、子どもにはしていいなんておかしいと思う。時間はかかるけど、子どもだってちゃんと説明したらわかるんですよね。だから、まちの保育園では、だめっていう言葉は極力使わないようにしています。子どもをひとりの個性、人格として尊重することを徹底していかないといけないと思うんです。

プロフィール

松本 理寿輝(まつもと りずき) 1980年生まれ。一橋大学商学部商学科卒業。「レッジョエミリア教育」に感銘を受け、幼児教育・保育の研究。博報堂、フィル・カンパニー取締役副社長を経て、2009年独立。国内外の幼児教育・保育視察、保育園での修行を積み、ナチュラルスマイルジャパンを創業。代表取締役。まちの保育園  

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