荒井良二さんインタビュー

#004 荒井 良二さん

4.自分の疑問に近づきたい

—荒井さんが絵本をつくられて今年で20年になりますが、当時の絵本を取り巻く状況がどんなものだったのか教えてください。

荒井:絵本をつくりはじめた当時は、絵本っていうものを理解した上で、別のアプローチはないだろうかっていう状況だったかな。絵本のあり方も、今とはだいぶ違うと思う。もっと狭かったんじゃないかな。でも、それが絵本だというふうに、理解しているところもあった。
絵本作家になろうなんて思ってないんだけど、「本」という形に興味があるから、イラストレーションの方向から、アートの方向から絵本を見たらどうだろうって、みんなそれぞれのアプローチで絵本を捉えようとしてた感じがあったよね。

—いま絵本の状況をどんなふうに見られてますか?

荒井:今はもしかしたら、絵本としてのひとつの型が完成したということなのかもね。これに準じていれば一定の購買力は期待できるとか、そういうね。つまんないと思うけどね。
絵本をかくための絵本作家が出てきたっていうこともある。それは何も悪くないよね。だって、職業なんだから。だけどさ、それが状況を悪くしているのかもしれないね。何か、同じというか、つまらないよね。団子は団子なんだけど、いろんな味の団子が次から次にでる。最初は新しい味かと思うんだけど、「なんだ、団子かあ」みたいなね。
俺が絵本をつくりたいって思う発露は、「商品」としての絵本とはだいぶ違うと思う。それで売れればいいけど、あんまり気にならないかな。何が売れるかってことを考えるよりも、自分の疑問に近づいていく方が断然おもしろいもんね。

Profile

荒井良二 荒井良二(あらいりょうじ) 1956年山形県生まれ 日本大学芸術学部美術学科卒業。 イラストレーションでは1986年玄光社主催の第4回チョイスに入選。1990年に処女作「MELODY」を発表し、絵本を作り始める。1991年に、世界的な絵本の新人賞である「キーツ賞」に『ユックリとジョジョニ』を日本代表として出展。1997年に『うそつきのつき』で第46回小学館児童出版文化賞を受賞、1999年に『なぞなぞのたび』でボローニャ国際児童図書展特別賞を受賞、『森の絵本』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞、2006年に『ルフランルフラン』で日本絵本賞を受賞。90年代を代表する絵本作家といわれる。そのほか絵本の作品に『はっぴぃさん』『たいようオルガン』(偕成社)『えほんのこども』(講談社)『うちゅうたまご』(イースト・プレス)『モケモケ』(フェリシモ出版)など。作品集に『meta めた』(FOIL)がある。 2005年には、スウェーデンの児童少年文学賞である「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を授賞。「スキマの国のポルタ」で 2006年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞。絵本のみならず、本の装丁、広告、舞台美術、アニメーションなど幅広く活躍中。 荒井良二オフィシャルWEBサイト http://www.ryoji-arai.info/