次回のインタビュイーは、本城慎之介さんです

 

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次回のインタビュイーは、軽井沢にある森のようちえん「ぴっぴ」のスタッフの本城愼之介さんです。
本城さんへのインタビューでは、「ぴっぴ」での活動に加えて、これまで本城さんが携われてこられたことなど、いろいろと伺ったため、森のようちえんについてあまり詳しくまとめられませんでしたので、ブログに少し思ったことなど書いてみたいと思います。

毎回インタビューの前に、できるだけ活動現場をじっくり訪れるようにしているのですが、今回も森のようちえん「ぴっぴ」への訪問をとても楽しみにしていました。訪れたのは、1月末。本城さんのアドバイスで、完全防寒で向かいました。軽井沢の駅につくと、本城さんの車に乗せていただき、ぴっぴの活動現場に到着すると、あたり一面雪景色。昨日子どもたちがつくったのか、大きな雪だるまが待っていてくれました。スタッフのみなさんのお手伝いしたり、お話したりしながら子どもたちを待っていると、おかあさん、おとうさんと一緒に徐々に集まってきます。9時になると、歌と絵本の朝の会がはじまりました。少し落ち着きがない子には、スタッフがそっと寄り添います。朝の会が終わると、みんなそれぞれ遊びに出かけます。そりで遊ぶ子、家をつくる子、ままごとをする子、遊具なんて何もなくても、どんどん遊びを発展させていきます。遊びに遊んで、おなかがすいたのか、二歳児がぐずりはじめたあたりでちょうどお昼ごはんの準備。着替えたり手を洗ったり、ちいさな小屋で一息ついたら、焚き火のそばの丸太の椅子に座ってお昼ごはんをいただきます。食事は、スタッフが育てた野菜など地元のおいしい食材を中心にしたシンプルなもの。滋養あふれるごはんが、冷えた身体をすみずみまであたためてくれます。ごはんを食べたら、また子どもたちは森のなかへ…。お迎えの時間が近づいたころ、帰りの会がはじまります。おおきい組とちいさい組にわかれて、絵本をよんだり、今日あったことを話したりしているようです。最後にみんなで輪になって、さようならの歌をうたったら、「おかあさーん」と大きな声で呼びかけて、木の後ろや扉の向こうで待っていたおかあさんたちが、待ってましたとばかりの大きな笑顔で子どもたちを迎えていました。

さて、今回「ぴっぴ」訪問前には「森」という環境が、子どもたちにどんな影響を与えているんだろう?無制約な時空が、遊びに与える影響をこの目で見られたら、と思っていました。でも、実際にいってみると、森の存在以上に、スタッフのひとりひとりの存在がとても豊かに感じられ、惹きつけられました。まるで森みたいに、おおらかで、たくましくて、凛としていて、子どもに対しても、大人に対しても、尊重することが前提として根付いているような感じなのです。こういう人たちのつくる場は、たとえそこが「森」じゃなくても、「森」にいるみたいにゆったりと豊かな関わりができるだろうと思いました。結局は、どんなことでもそうかもしれませんが、「人」が場をつくり、関係をつくるわけで、「環境」はその付加的要素なのだろうと思います。一方で「人」を育てる、という意味でも「森」という場所が与えてくれる叡智は、大きなものがありそうだということも感じました。

それからもうひとつ、子どもたちに芯の強さというか、自立したひとりとしての強さみたいなものを全体として感じました。大人が思う「子どもらしさ」って、よくもわるくもあると思うのですが、そういう「子どもらしさ」みたいなことを求められていない結果なのか、ひとりの人間として尊重された結果なのか、わたしはわたしとしてここにいます、というような態度を感じました。誰かの考える「らしさ」の枠組みに、自分をあてはめる必要がない、そのままでいいと受容され続けた結果なのだとしたら、本当にすごいことだと思います。

本城さんのインタビューの中で「動物的」という言葉が何度か出てきますが、森の中にいると、自ずと動物的な感覚と離れられません。そのことが与える影響はとても大きいと思います。わたしたちは、はやく言葉を覚え、はやく何かができるようになることを奨励すると同時に、人間が本来もっているはずの動物的な部分を少なからず否定しながら、子どもたちをはやく「人間」にしようとしてきたと思います。でも、本当にそれでいいのだろうか。動物的な部分をまだたくさん持っているはずの幼児期に、その動物的であることも含めて肯定しながら、出来る限りゆったりと成長を見守り、子どものそうした部分に大人も触発され、自らの動物的感覚を取り戻すことができたら、子どもと大人はさらに豊かな相互関係を結ぶことができるのではないか、そんなことも考えさせられました。