こどものカタチ研究会「子どもとは何かー幼児教育の現場から考える」レポート

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翌日の大雪が嘘のようにあたたかい陽射しにめぐまれた日曜日、23名の参加者のみなさんが森のテラスに集まりました。
教育の現場で働く方や、幼稚園保育園を紹介するWEBサイトを運営している方、デザイナーやワークショップの企画実施する方などなど、遠くは熊本、福岡、長野などの全国各地からさまざまなアプローチで子どもに関わる人たちが集まりました。輪になって一人ひとり自己紹介をしていただいた後、最後に井口園長からの自己紹介。「今日は既成概念をとっぱらって、おはなししましょう」という一言に、場の空気が変わりました。

中瀬幼稚園の2日間の様子を収めた短編映画「風のなかで -ある秋の日に-」を鑑賞した後、ランチタイム。真冬とは思えないほどのぽかぽか陽気に、屋外のデッキに出てランチを楽しむグループも。午後からは、窓ガラスをとりはらい、デッキまでを会場として、鳥の声や木の葉の音が聴こえる中ですすめました。

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午後のセッションは、示唆にあふれるさまざまやりとりがなされましたが、その中でも2つのやりとりについて紹介したいと思います。

・幼稚園は何のためにあるのか?
・中瀬幼稚園を一番支えているものは?

保育園は親が働いていて子どもを見てもらうことができないと生活が成り立たないからわかりやすい。でも、幼稚園は何のためにあるのか?子どもと一緒にいられるのであれば親がみてもいいはず。その存在意義をどのように考えたらいいのか?という質問に対して、数名の人が意見を述べました。井口先生からは、幼稚園は自らの生き残りをかけて、大人の都合を優先する教育を進めているところも多い。しかし、目に見えない部分を豊かにすることこそが大切で、子ども同士の学び合い、群れて遊ぶことの大切さ、みんなで一緒に何かすることで得られる小さな成長の豊かさが得られることが幼稚園の存在意義ではないか。加えて、わかりやすい名詞的な活動ではなく、わかりづらい動詞的な活動、「~をつくりました」ではなく「~しました」という消えていく言葉を大切にしたいと話されました。

中瀬幼稚園を一番支えているものは?という質問に対して、「環境」と答えられました。場所にはそれぞれ歴史があるので、歴史を紐解き、そこからスタートすることを大切にしていて、メソッドに頼るとかメソッド化するということではなくて、それぞれの人が活動する場の環境や歴史に応答するように教育も考えていくといいのではないか、それこそがメソッドかもしれないと答えられました。その中で先生が紹介された「汝の足元を掘り起こせ、さすれば水が湧くなり」という言葉が印象的でした。

ここでは紹介しきれませんが、午後のゆったりした対話の時間の中にはかなり核心に迫るものもあり、充実した時間となりました。やりとりをまとめると、もうひとつインタビューのページができそうです。

映画「風のなかで」の上映会が全国各地で行われ、たくさんの人に中瀬幼稚園の稀有な活動を見ていただきながら、幼児教育のあり方を一人ひとりが考えるきっかけになっていくといいと思います。

ご参加いただいた皆様、井口先生、中瀬幼稚園の先生方、本当にありがとうございました。

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